花の本棚

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桂望実 残された人が編む物語

桂望実 「残された人が編む物語」
明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
新年一冊目は気になってはいたけど後回しにし続けていた作品を読んでみました。

 



 
行方不明者捜索協会という民間企業に勤めるスタッフと依頼者で行方不明者を追い、その人生を紐解いていく短編集となります。
調査すると行方不明者は死亡しておりその人がどういった人生を歩んでいたかを探るというのが各章で共通した流れです。生きている人がその人への心残りがなくなるように人生を辿っていく描写はとても感動的で本作の見所といっていいでしょう。推測や願望を交えてでもその人の物語を編み上げることで前を向いて生きていく、と表現されていたりと作中で使われる表現はどれも綺麗なのも良い点だと思います。
 
作中にて調査をしても真実が分からない時は自分にとって都合よく解釈したって良いという考えを話しているシーンがありました。本作の中では死者に対して使っていたのですが、私はこの考え方は死者だけでなく通常の人間関係では非常に大事だと思っています。
「自分にとって都合よく解釈」は字面が悪いですがポジティブに言うと自分が一番納得できる解釈をするということです、これは私もよくやります。特に心の内についてはどれだけ親密になっても見えませんし、確かめようにもウソはいくらでも言えてしまうので確証が得られることはありません。なのでまずは現状見えているもので作り上げられる解釈を真実としてしまって良いと見ています。仲のいい人に何かするときも、誰かと絶縁するときも自分勝手な解釈を使って致命的に的外れだったことは一度もないので、人間関係に悩んだら使ってみるのをおススメします。
 
全体的に描写が綺麗な作品でしたので、気になる方はぜひ読んでみてください。