花の本棚

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染井為人 震える天秤

染井為人 「震える天秤」
染井さんの作品で割と新しめのものを読んでみました。

 

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コンビニに高齢者がトラックで突っ込み店長が死亡する事故が起きた。主人公の記者は高齢者ドライバーに関する記事を書くために取材を進めると、加害者は認知症ではなく故意に事故を起こした可能性が浮上する。加害者の村を訪ねても人々はその可能性に対して過剰なまでの反発をし、事故に見せたい理由があると確信する。不自然な事故の真相を探るというお話。
 
こちらはミステリー小説となります。
はじめに概要を見たとき高齢者の認知症をテーマにした作品かと思ったのですが、読み進めてみると田舎の閉鎖社会の不気味さがメインとなっていました。読み進めていくと展開が二転三転していき、「これどこに着地させる気だろう?」と心配になるほどでしたが、ちゃんと綺麗に話がまとまっていました。染井さんの作品はこういったところが上手いなと常々思います。
中盤くらいまでは主人公も高齢者ドライバーの記事を書くために取材しているので、この問題にどう向き合うべきなのかという話も出てきます。メインではありませんがこういった社会問題の面も書かれていてためになる内容もあります。
 
事故を起こした老人が自分の行動を覚えていない、というのは嘘ではないかと疑っているシーンがありました。
日ごろの生活の中でも「実は忘れたフリではないか?」と疑いたくなる場面は度々あります。嘘かどうか見抜く方法の一つに記憶の粒度を見るのが良いです。その人が無意識に記憶する習慣となっている情報が突然抜け落ちることは普通ありません。よって特に理由もなく記憶の粒度が変わっている場合は覚えているけど言いたくない事情があるのだと判断して良いでしょう。
私が一番見かける例でお酒を飲むと何を言ったか忘れてしまうと自称する人がありますが、もし同じ場で「自分が言われたこと」はきっちり覚えていたら、同じ言葉の情報で記憶に差があるため前述の宣言は嘘の可能性が高いです。専門家ではないので明確に根拠があるわけではありませんが、今までの経験上これは正しいと思っています。
 
染井さんの作品は面白いものが多いので気になる方は読んでみてください。