花の本棚

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矢樹純 マザー・マーダー

矢樹純 「マザー・マーダー」
他のブロガーの方が紹介されているのを見て気になったので読んでみました。
 

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異様なまでに息子を溺愛する母親がいた。話によればその息子は中学生の頃から引きこもりで年齢はとうに30を超えていることもあり、息子のために周囲とトラブルを引き起こす彼女のことを誰もが避けていた。しかし当の息子を見た人はおらず、彼女は既にいなくなった息子の話をしているのではないかと噂され始める、というお話。
 
ホラー寄りのミステリー短編集となっています。
息子を溺愛する母親と関わった人々のエピソードがそれぞれ短編になっていて、最後の章で全部の章のつながりから真相が明かされるという流れになっています。
本作のテーマが「母性」であることから各短編でも母親にまつわる話がメインとなります。母親は子のために悩む姿はとてもリアルで、それを乗り越えるためにどこまでのことが出来るのか?という描写は歪んでいながらも母性と見えるために不気味さが一層際立っていました。
ミステリーとして見ると後半の章から上記母と子の異様さの正体が明らかになる展開は驚かされます。最後まで読んでから前の章を見ていくとまた違った描写が見えてくるようになっている描き方は非常に上手い。真相を自力で推理をする必要は特にないので、話を面白くするためにミステリー部分がある認識で良いと思います。
 
矢樹さんの作品はこれが初だったので他の作品も読んでみようと思いました。