花の本棚

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まさきとしか 彼女が最後に見たものは

まさきとしか 「彼女が最後に見たものは」
まさきとしかさんの新刊が出ていたので読んでみました。

 

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空きビルにて中高年女性の遺体が発見された。後の調査にて彼女はホームレスであることが判明し、さらに1年以上前の殺人事件の現場から彼女の指紋が発見された。彼女が殺人事件に関わっているのは確かであるが、決まった住居がないのに彼女の目撃情報がほとんどないなど不可解な点がいくつかあった。主人公の刑事二人が事件の真相を探るというお話。
 
幸せをテーマにしたミステリー作品です。
自分が幸せに見えるようにSNSを更新する女性たちなどを描くことで本当の幸せとは何なのかを作中にて問うていました。周りに見せている姿だけでその人が幸せかどうかは推し量れないということを著者は伝えたかったのかなという印象でした。
一方でミステリー面の方は細かい謎をちりばめて上手く真相を隠しています。二転三転する展開の後に真相がわかったときは衝撃的でした。
また幸せがテーマになっていると上に書きましたが作中では本当に幸せだったのは誰なのか?という点もミステリーの一つになっているように読み取れました。事件の真相だけでなくこの点についても推理(?)してみると本作をさらに楽しめると思います。
 
本作からは幸せを人と比べるな、というメッセージが随所に描かれていました。とはいえそれはもう誰しも分かっていることであって、現代ではSNSなどから他人の情報が流れてくるので比べないでいるのは無理でしょう。
その点も踏まえて考えたのは比べるとしても相手をちゃんと選ぶことです。具体的には幸せ判定に使う要素が自分と同じグレードの人と比べればストレスが少ないのではないでしょうか。芸能人などハイグレードの人と比べてしまうとどの面を切り取っても劣等感を感じてしまいますが、同じグレードであればどこかしらは自分が勝っている面が見つかって総合的には同じくらいになるという考えです。どうしても人と比べるのがやめられないのであればせめて比べた後に少しでもいい気分になるようにした方が良いと思います。
私としては幸せな人生だったかどうかは死ぬ瞬間に分かると思っています。総合して良い人生だったと死の間際に思えればそれでいい、というタイプなので日頃から惨めさや罪悪感がある生活をしていなければ良いかなという雑な考えでいます。
 
ミステリーと社会問題どちらの面でも楽しめる作品となっていますので、気になる方は読んでみてください。