花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

月原渉 鏡館の殺人

月原渉 「鏡館の殺人」
前に読んだ「犬神館の殺人」が良かったので別の作品を読んでみました。
 

f:id:flower_bookmark:20201023222717j:plain


鏡館と呼ばれる左右対称でいたるところに鏡が置かれた屋敷に富豪の妾が産んだ娘たちが暮らしていた。年に一度だけ富豪が屋敷を訪れる日、置かれた手鏡から殺害予告の文字が映し出される。その予告通り富豪は鏡張りの部屋で殺害され、屋敷の外は嵐のため娘と使用人たちは屋敷に取り残されてしまう、というお話。
 
こちらはミステリー小説です。「犬神館の殺人」に登場する使用人と本作の使用人が同じ人物で探偵役をするシリーズということを今回知りました。
暗号、密室トリック、心理トリックと一冊の作品でありながら複数の分野の謎が織り込まれているので推理しながら読むととても楽しめます。最後まで読み進めると妾の娘たちの心情が書かれており、推理以外の点でも良い部分がありました。「犬神館の殺人」を読んだ時は色んな要素盛り込みすぎている、と思っていましたが今回はその色んな要素が前作よりも上手く使われている印象です。あえて多く盛り込むことで独自の作風を出そうとしているのが感じ取れて私としては好印象でした。
 
娘の一人が「嫌われ者だからこそできることがある」と主人公に言う場面がありました。
嫌われ者はその人の人格から生じる特徴であり、このような特徴を利用するのは私もよくやるので共感できました。特に上記のようなネガティブな特徴は普通の人が手を出しづらいいわゆる「人が嫌がること」が出来るので立派な強みになります。
私の場合は何をしても目立たない点をよく使っています。社会生活でも目立たないことを使って色々と出来るのですが、その一つに恥を気にしなくていいというのがあります。私の業界の特徴なのかプライドの高い人が多いため人前の恥を嫌う方が非常に多いです。そういった点から得体のしれない仕事などいくらかトライアンドエラーが織り込み済みの仕事で一番手をしてもらって後続のために情報を残す役にうってつけとなります。
また目立たないのにも最近磨きがかかってきて、たくさん失敗したのに誰も見てないのをいいことに「時間かかったけど一発成功」な雰囲気で報告することもできるようになりました。他にもネガティブな特徴を私はたくさん持っていますが上手く利用させてもらっています。
ここまで良いことを書いていますが問題点もあって、出来るからといって欲が満たされるとは限らないことです。もし私が「本当は注目されたい」と渇望していたら上記のことがいくら出来ても不満でいっぱいになるでしょう。能力がある=満たされているでないことは心得ておくべきです。私が善し悪し諸々含めて自身を気に入っているのは欲と能力のズレが少ないからだろう、と思っています。
 
月原さんの作品は推理しながら読むと楽しめる作品が多いようです。気になる方は読んでみてください。