花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

薬丸岳 ガーディアン

薬丸岳 「ガーディアン」
好きな作家なのですが評判がイマイチだった一冊。読むか迷いましたが、この人なら大外れってことはないと考えて買いました。



主人公は赴任した中学校の教師。かつてその学校は不良生徒によって荒れていたが、近年はいたって平和な学校となっていた。そこには生徒たちによる公にされていない自警団「ガーディアン」によって守られていた。ガーディアンによって不当行為を働く生徒に制裁が下るために教師では気づくことのないいじめなどが解決されて行っていた。しかし制裁を受けた生徒はみな不登校となっていた。ガーディアンによって生徒たちは本当に守られていると言えるのか?と疑問に思った主人公はガーディアンの正体を探る、というお話。

テーマは「教師は生徒に対して何が出来るのか?」です。近頃いじめによる自殺がニュースで話題になっているので考えさせられることがある作品になりました。全体を通して読みやすく、ちょっとしたミステリーも入っているので飽きずに読めます。評判ほど悪い作品ではありませんでした。

帯にも書かれてる「先生は無力なのか?」についてですが、私はその通りだと思います。「教師は気高い聖職」というイメージを守ろうといろいろな問題を解決しようとしているようですが、そのイメージをそろそろ捨ててもいいのではと思ってます。自分の家族が何か悩んだりしているのを察知するのですら結構難しいのに、赤の他人である生徒20何人に悩んでいないか目を配る、など出来るはずもない。自殺が起きた後の学校側の会見で「いじめはなかった」とよく言っていますが、正確に表現するなら「いじめがあるか確認すらしてませんでした」が正しいはずです。聖職のイメージがあるから「出来ない」がなかなか言えないのは分かりますが、何でも出来るように欺いてる内はモンスターペアレントの問題などは解決しないでしょう。

薬丸岳らしいと思ったのは「残念ながら先生は無力です」で終わらないように配慮されているところ。こういったテーマで本を書くと現代の先生がいかに頼りにならないか、を強調して終わることが多いのですが最後には先生たちの見せ場がありました。教師のこと好きじゃない私でさえ「先生カッコいいな・・・」って思っていしまうほどでした。美化され過ぎ、なのかもしれませんが。

よく言えば薬丸岳にしては手を付けやすいライトな作品、悪く言えば薬丸岳にしてはパンチが弱い、という作品でした。いじめに関する話題性という点では今の世の流れには合ってるので良いと思います。