花の本棚

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汐街コナ 「死ぬくらいなら会社辞めれば」が出来ない理由

汐街コナ 「死ぬくらいなら会社辞めれば」が出来ない理由
本屋で見かけて気になったので買ってみました。かなり売れてるらしいです。



内容はタイトルどおりです。大項目は
・なぜ死ぬまで頑張りすぎてしまうのか
・死なないための考え方
・ストレスを少しでも減らすための人間づきあいの仕方
心療内科に関するQ&A
となっています。
筆者の実体験やtwitterで募った実体験をもとに漫画化して、死を考えるまでに陥る過程を載せています。
こんな本買うなんてお前ヤバいんじゃないか?と軽視する気持ちになるかもしれませんが、今の世の中をちゃんと見ているなら精神疾患に関して無関心ではいられません。
漫画ベースでありながら内容はかなりためになるものでした。すぐ実践に移せるものから長期的なものまで色々な解決策が書かれています。また実体験ベースの話ばかりなので共感するところが多いです。今の会社以外がどうなっているのかは私は正確には把握していませんが売れてるってことは似たような境遇の方が多いということなのでしょうか。

読んでいてツライ状況になっている本人に対して周囲から何が出来るか、がためになりました。「死なないで」などの声をかけて愛を確かめるのもいいのですが、最優先ですべきは「狭くなってる視野を広げてあげること」でした。当人は目の前の苦しい状況のせいで他の物が見えなくなっているので、そのことに気づかせる手助けを外からするのが良いとのこと。そして「自分で行動を選べる状態にしてあげること」にするのが良いとのこと。休ませたり辞めさせたりするのも悪化させないためには重要ですが、それらを自分の意志で選ばないと休んでても仕事が気になったり、辞めたことへの罪悪感が発生したりするので注意しましょう。

本書の項目の一つに「不幸自慢をする人との関わり方」が書かれています。一個の項目使う内容になるレベルなことに少し驚き、一方で納得出来ました。社会人になって数年で分かったことですが、社会人の大半は不幸自慢が大好きです。「俺はこんなに苦労してる」「俺はこんなに寝てない」はもはや鉄板ネタと化しています。
本書の中ではこの種の人への対策は「勝手に言わせておけばいい」でした。それが一番手っ取り早くて楽だと私も思います。
不幸自慢をする人の多くに共通するのはそれしか自慢できるものがない、という点もあるのですが最も大きいのは「自慢することで自身が不幸になってることを誤魔化したい」と見えます。私も月~金がすべて終電帰りという状態が長く続いたことがありましたが、その当時も苦しい状況の自身を奮い立たせるために周囲に残業時間の自慢をしていた覚えがあります。あの時に私の不幸自慢を聞いた人は今頃私からは離れて行ってしまっているでしょうけど、過ぎたことを言っても仕方ありません。いつか私が聞く側にまわったときは適当に聞き流しつつも見捨てないようにします。

この本が気になった理由のもう一つは、私自身が今の会社で入社二年目に自殺を考えたからです。
その時の心境がこの本に書いてあることと似てるのだろうか?というのを確認したかったのですが、結論から言うと違いました。
能力が劣悪な自分が生きて働き続けるプラスよりも、自分が死ぬことによって生じる会社へのプラスの方が大きいと判断していました。
その後事態がさらに一歩進んだ結果、私のとったある行動によってこの件は片が付きました。それはまた別のお話なのでここでは書きませんが、その行動は社内の一部関係者間で何年も経った今なお小さくない問題として残っているようです。とはいえ死人を出さずに事態が表面上は収束したので安い代償でしょう。

現在の社会的トレンドとして精神疾患に関する知見は今後必須になるので、そのとっかかりとしてはお手軽で良いでしょう。
自分がなりそうになくても、将来家族や大事な人がそうなったときに右往左往しないように備える意味で役に立ちます。