花の本棚

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方丈貴恵 時空旅行者の砂時計

方丈貴恵 「時空旅行者の砂時計」
以前読んだ「アミュレット・ホテル」が面白かったので方丈さんの別の作品を読んでみました。
 


主人公の男性は入院していた妻の様態が悪化して瀕死の状態にあった。その原因は彼女の祖先から続く「呪い」にあり、その発端である連続殺人事件を解明して彼女を救ってみないかとタイムトラベルの案内人から持ち掛けられる。妻を救うためにタイムトラベルで当時の事件現場の屋敷にやってきたが、降り立つところを一族の孫娘に見られてしまう。仕方なく未来から来たことと目的を話し、彼女の計らいで一族の者たちに不審に思われながらも屋敷を調査させてもらえることとなる。
しかし、屋敷で起きるのは未来を知っている彼ですら防ぐことが出来ないほどの不可能殺人であった、というお話。
 
タイムトラベルを題材にしたSF系ミステリーとなります。
現実にないタイムトラベルが出てくるのでSF系としましたが、その設定はかなり現実的なものとなっているのが面白い。もし本当に現実世界にタイムトラベルが可能となったとしたらこういった仕組みになり、こういった制約があるだろうというのが丁寧に作られています。
そしてそれらを使ったミステリー部分は非常に面白いです。「アミュレット・ホテル」でもそうでしたが方丈さんの作品は設定した舞台の使い方が上手いようです。その代わりSF設定の部分を理解しておかないとミステリー部分の面白さが減ってしまうので、難しい説明ではないのでちゃんと理解して読み進めた方が良いでしょう。
 
作中にて一族の当主が懐中時計を一族全員に渡しており、それには小まめに竜頭を巻くように家族を維持するために自分から手間をかけることを願っての物だという話が出てきました。この考え方には賛同できる、特に「自分から手間をかける」と言っている点が重要だと思っています。
家族に限らず、職場や友達の集まりなど何かしらの集団や場を維持するためのアクションがあります。そのアクションの起点が実は集団の中にいる1,2人しかやっていない状態だと非常にマズい。気配りや声かけがマメなある人がいなくなった途端に雰囲気が一気に悪くなった、というのを私も会社の職場で見たことがあります。ということがあるので自分にとって大事な集団があったら維持するためのアクションは率先してやるようにするのが良いでしょう。ちなみに維持のためのアクションを軽んじる発言や行動をすると大惨事になりやすいので気を付けましょう。「トイレットペーパー変えなかったくらいでそんなに怒るなよ(笑)」と言った先にどんな地獄が待っているかは、経験がある方もいるのではないでしょうか。
現在接点のある場で維持のためのアクションを自分が出来ているかというと、私も出来ていないです。起点にならない分アクションが見えたら反応は迅速にしよう、くらいは考えていますが急に爪弾きにされても文句は言わないという気構えではいます。
 
SF設定の使い方が面白いので、気になる方はチェックしてみてください。