花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

真紀涼介 勿忘草をさがして

真紀涼介 「勿忘草をさがして」
昨年の鮎川賞の作品が書籍化されたので読んでみました。今回は受賞作品がないため優秀賞の作品を書籍化したとのこと。
鮎川賞はミステリー作品の新人賞という位置づけとなりますので毎回期待しながら読ませてもらっています。
 


主人公の高校生は一年前に偶然出会ったおばあさんの家を探していた。探す手掛かりは彼女の家の庭には沈丁花が咲いており、その匂いがしていたこととおばあさんとの当時の会話だけであった。あのときのお礼を言いたいのもあるが、彼は学校であるトラブルに会ってから鬱屈した日々を送るだけになっているのを何とか脱却したくて彼女を探していた。家を探しているときに同じくらい庭を綺麗に低淹れしている大学生の男性と出会い、一緒に彼女の家を探すことになるというお話。
 
花と植物を題材としたミステリー短編集となります。
各章の謎はどれもささやかなものではありますが、植物を絡めた謎となっているため綺麗な雰囲気となっていて良いです。謎そのものは深くはないため自分で推理する必要は特にありません。
主人公を含め、登場人物たちが植物を通して自身の悩みと向き合うという描写が各章にありました。学生生活、結婚生活、家族とのかかわり方について登場人物たちが悩み、向き合っていく描写がとても上手くて本作の見所になるでしょう。
また作中では花と植物に関する話がたくさん出てきます。世話の仕方、生態、花言葉、など自分の知らない領域のことを多く知れたので個人的にはここも見所の一つになると思っています。
  
作中にて親と仲が悪い男性が親のことを嫌い過ぎて歩み寄る機会すら与えないようにしている、という描写がありました。この考え方にはとても共感出来ました、私もこういったことをたまにやるので。
どんな理由だろうと許しがたい物事というは誰しもあることだと思っています。上記の拒絶と同様に相手の事情を確認しないでいきなり責め立てられたときも同じような心情から来ているのだろう、と私は解釈しています。もし私の行動に対して事情を聞かずに批判が来たときは、その人にとっては背景によって左右することが絶対ないほど許しがたい事なのだと察して言い訳も背景説明もしないようにしていました。
実は今月職場にてこれに該当する出来事がタイムリーに起きていました。詳細は割愛しますがこちらの事情を一切聞かずに責め立てられたので、誰にも何も話さずに改善策を実行していたところマネージャーたちに見つかって大事になってしまいました。相手側曰く「脊髄反射で言ってしまった」らしいのですが、論破とか論理的思考とか日頃知的ぶっているのに猿みたいな脊髄反射してくるのは理解できませんね。
 
今後が楽しみな作家さんですので、気になる方はチェックしてみてください。