花の本棚

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烏丸尚奇 呪いと殺しは飯のタネ 伝記作家・烏丸尚奇の調査録

烏丸尚奇 「呪いと殺しは飯のタネ 伝記作家・烏丸尚奇の調査録」
このミス大賞2022の隠し玉という触れ込みが気になって買ってみました。

 



 
主人公の伝記作家としてそれなりに売れていたが完全オリジナルの作品を描かせてくれない現状が不満であった。そんな彼に企業創業者の伝記を書いて欲しいと依頼があり、契約を見ると「感電死するような刺激を約束する」という条項があった。刺激に飢えていた彼は依頼人の住む地域に行ってみると、創業者の周りでは不審な死や事件が相次ぎ呪われた一家と呼ばれていることが判明する、というお話。
 
呪われた一家の正体を探るミステリー作品となります。
全体的にライトな雰囲気で出来ていますがミステリーとしては質が高いです。一家に隠された秘密や事件の真相の繋がり方も上手く、話もサクサク進むのでテンポ良く楽しめます。
また雰囲気のライトさもそうですが話の展開から見ても自分で推理する必要は特にないので身構えずに読める点も良いと思います。このミス大賞の隠し玉なのに推理しなく良い雰囲気なのは矛盾している気もしますが、隠し玉になった理由はこの辺りかもしれませんね。
 
主人公の作家が「事実は小説より奇なり、なはずはない。作家の実力がないだけ」という持論を話しているシーンが何度かありました。現実で起きないようなことを見せてくれるのは小説含め創作物の良いところだと思っています。
私が本を読むのが好きな理由の一つは自分の人生の中では現れないものを見られるからです。自分では成る事が出来ない職業の実情だったり、見えるはずがない心の中の想いが文字に起こされていたりするので読書が長く続いているのだろうと思います。こういった楽しみ方が出来るのは作家さんの努力の賜物なので、気に入った作家さんは中古ではなく出来るだけ新刊を買って応援するようにしています。
ただ、現実に奇がないかと言えばそんなことはありません。それは自身が慣れた環境から出てないだけで、毎年住む地域や居場所を変えたらいくらでも奇は起きるでしょう。そう考えると奇を常に得るには自分が常に動かないといけないので、奇がないと嘆く人は行動力不足ということになります。人生に楽しいことが一つもないと愚痴りがちな人は行動する気力を取り戻すことから始めるのが良いでしょう。
 
軽めのミステリー作品を探している方にはお薦めできる作品です。