花の本棚

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折原一 異人たちの館

折原一 「異人たちの館」
コミュニティで紹介されていたのを見て買ってみました。折原さんの作品はこれが初めてでした。
 

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あるとき主人公は樹海にいって行方不明となった息子の生涯を書籍にまとめてほしいと婦人から依頼を受ける。彼の部屋にある幼少期からの資料を調べてみると幼いころから文学賞を取るほどの文才を持っていることが分かった。調査のために関係者のもとに取材に行くと先回りして同じことを取材する人物がおり、またその道中でも後をつけられている気配を感じる。親しくなった彼の妹によるとそれは異人の仕業であると言われる。
伝記を作成しながら彼の生涯に何があったかを追うというお話です。
 
ミステリー小説となります。発売されたのは1993年でこちらは近年新装されたものになります。
600ページほどの長編ミステリーなので読み応えがあります。中弛みにならないか心配だったのですが、次々と展開変わるので最後まで飽きずに読めました。
最近過去に傑作と呼ばれた作品を読んでいるのですが「当時斬新だっただけで今では通用しない」という感想になることばかりでしたがこの作品は今読んでも十分に楽しめると思います。
 
本線からは外れますが作中にて気になる発言を見ました。
作家志望の兄をかばうために「根は悪い人ではないんです」と妹が言うシーンがありました。この表現は聞く側からすると完全に無価値な言い分だと思っています。
まずその人の枝葉の人格が悪いと言っているのに根の人格の話を持ってきても論点のすり替えにしかなっていないこと。また根まで見ないと分からないような良さは他人からしたら何の価値はありません。よほど親密でない限り根の人格に触れることはありませんから。そもそも、根=ベースの人格とするならそれが枝葉に一切現れないことはありえない、つまり根にしかない良さは最初から存在しません。
あげくこの言い方は「深い人格まで見ない浅はかな人」とこちら側を非難する言い方なので、かばいにきた人も含めてその人が最悪なことは明らかです。会社でこう言われている人を私も数人知っていますが、いずれも根を覗いてまで見直す気が起きなかったので関わらないようにしています。
 
ページ数多いので、気になる方は自粛で時間のある今のうちに読むのがよさそうです。