花の本棚

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中町信 偶然の殺意

中町信 「偶然の殺意」
今回は貰い物の作品。帯によると著者の隠れた名作とのこと。
 

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すし職人の男性が常連客の一人から莫大な財産を残された話を聞かされる。相続対象となった人の中には別の常連客もいて、不遇な境遇を同情される人もいた。しばらくして相続人の一人が地震による崩落で死亡したが、崩落前に毒殺されていることが判明する。その後も相続対象者が次々と死亡し始め、すし職人とその母が事件の真相を探るというお話。
 
純粋なミステリー小説で1995年の作品を改題、文庫本で復刻したものです。
ミステリーとして非常に上手く描かれています。随所にある伏線や人物の設定が上手く使われているため読んでいて納得感がある。自分で考えて推理することも十分出来るので、好きな人はチャレンジしてみるのもよさそう。
時代背景の関係で表現の仕方が古めかしい部分はありますが読んで邪魔になっていません。少し前に読んだ同じように古い時代設定の「罪の轍」では何を描いているのか分からない部分があったのに、この差は著者の技量なのでしょうか。
近頃名作と言われる過去の作品を読んでみようとして失敗するケースが多かったのでこの作品が楽しめたのは私にとって収穫でした。ちゃんと選べば昔の作品も読めると分かったのは大きい。
 
昔のミステリー小説を読んでみようという方はこの著者の作品から入るのも良いかもしれません。