花の本棚

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千早茜 人形たちの白昼夢

千早茜 「人形たちの白昼夢」
以前読んだ「透明な夜の香り」が面白かったので新刊を買ってみました。
 

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SF風の短編集になります。自動人形や山の神々など現実離れした世界観を綺麗に描いています。
ただ綺麗に描いているだけではなく、それぞれのストーリーには何かしらの意味が込められています。自分が大切にしたいものとどう向き合うかなどを表しているものがありましたが、このジャンルを読みなれていない私には半分くらいしか汲み取れていない気がします。詩集が好きな人などが読むともっと理解が深くなって楽しめそうという印象です
メルヘンな世界観というと村上春樹さんを思い出すのですがこの作品はもっとイメージしやすく描かれています。完全な偏見ですがメルヘン系って如何に理解しがたく表現して「わかる人にはわかる優越感」を醸し出すかで勝負していると思っていたので、分かるように書いていると感じられる時点で好感が持てます。
 
大切なものとどう向き合うかをテーマにしたストーリーがあると上で書きました。
大切な相手には言動と行動で分かりやすく表すように私はしているのですが、「大切な人ほど雑に扱ってしまう」と言っている人を何人か見たことがあります。
行動の方が本心だからこれを言う人は漏れなく嘘つきだ、と考えてきたのですが本書を読んで考えたら別の解釈にたどりつきました。大切だと相手に伝わってしまうと自分が下の立場になってしまうと解釈しているのでしょう。原因がプライドの問題だけなら大したことないのですが、親など立場が上の人間から痛烈な攻撃をされたことがあるから下の立場になるのを怖がる人がいると感じるようになりました。ネグレクトを受けたことのある人は感情を素直に表現できないという話を聞いたことがありますが、もしかたらこういう面もあるのではと思い至りました。
 
最近推理物ばかり読んでいたのでこういった世界観に触れられて面白かったです。