花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

恩田陸 Q&A

恩田陸 「Q&A」
Amazonのおすすめで出てきたので読んでみました。



大型デパート内でパニックが発生し、大勢の死傷者が発生した。目撃者から「毒ガスが撒かれた」「火災が発生した」という証言があったが現場検証を行ってもその痕跡は何も発見されず、原因不明の事故として処理される。目撃者に話を聞くとそれぞれで証言が食い違っていることが判明する。本当に事故だったのか?目撃者に問いかけることでその真相を探るというお話。

二人の人物のQ&A方式で話が進むという変わった話です。証言ベースのミステリーは結末がイマイチになりがちですが、直木賞取った人ということで期待していました。
読んでみた結果、なんとミステリー小説ですらありませんでした。あらすじに完全にだまされた・・・。
しかもミステリーメインじゃないせいか結局なんだったのか分からない部分も多く残り、真相部分の話はかなり雑に終わります。

本書のメインは「人間がいかに不安に耐えられないか」というところに焦点を当てていました。
何かことが起きたときに何とかして他人のせいにしようとするのは、人間が不安を抱えて生きられるように元々出来てないからだそうです。
「自分に対して起こる出来事は全部自分のせい」と思って生活しているので他人のせいにしたいような不安というのは私にはよくわからなかった。このあたりに共感できる方が読むとこの本は面白いかもしれない。
それと別の本で似た題材を読んだときもそうだったんですが、世の中に不安な人間が増えると宗教が流行るみたいです。人間相手だと他人の不安を聞くというのは労力かかって大変ですが、神様はいくらすがっても嫌な顔しないので便利です。そういう意味ではキリスト教などの主流になる宗教が日本にないのは問題なのかもしれません。

評価高くて期待していたのですが、ミステリーを期待して読むのはやめた方がいいです。
その代わり人間心理の話が好きな方なら読むと楽しめます。