北山猛邦 「月灯館殺人事件」
北山さんの「神の光」が面白かったので別の作品を読んでみました。

主人公の作家はスランプに陥って次回作をまったく書けずにいた。そんなとき「ミステリの神」と謳われる作家が住む館「月灯館」に住み込むことになる。この館は一時期注目を浴びたが様々な事情で執筆が進まないと悩む作家たちが集まり、互いに刺激を受けて立ち直るために始まったとのこと。
入館して冬至を迎え、その日は館恒例の晩餐会が開催されることになっていた。しかし晩餐会にてその場にいた7人の作家を「ミステリ作家の七つの大罪」と称し、処刑する旨を伝える音声が再生される。何かの催しだと考えた一同だが、翌朝に館の主が密室の中で殺害されているのが見つかる。その密室の状況はかつて出版された書籍に使われたものと酷似していてトリックも同じと見られていた、というお話。
ミステリー作家をテーマにしたミステリー作品。
本作の見所は「本格ミステリーとは何か?」に対する考え方が多く出てきて面白いことです。「世の本格ミステリーは過去のトリックの盗作と模倣でしかない」というのが館の主であり、登場する作家たちがそのことに悩んでいる描写は制作側の苦境が見えて面白かったです。
ミステリー部分については好みが分かれそうな印象でした。本作で登場する密室殺人は「過去のミステリー小説に使われたトリックを模倣している」という設定であるため、そのことに気づいた登場人物たちも現場検証や推理を途中で止めて模倣元の作品を探し始めたりしてしまいます。こういった流れは他の作品には無い流れで面白いと感じるか、自分で推理する楽しみが削られてつまらないと感じるかが分かれそうです。私としては上に書いた部分が面白かったので、ミステリー部分は添えてあるくらいで読めばいい、という心持ちで読めば問題ないと思っています。
作中にて現代の本格ミステリーは古いミステリーのトリックを使い回しているだけなのが実情、と語っているシーンがありました。まったくの0から新しいものを産み出すはもはや困難、はミステリー小説も他の分野と同様のようです。だからこそ、現代の新技術であるAIなどを使ったミステリーが流行っているのかもしれませんね。
私としては古いミステリーを使いまわしているだけでも構わないと思っています。趣味で本を読んでいる身でしかないので、雑に言ってしまえば楽しめれば何でも良くて、その内容が模倣なのかなどの背景には興味ありません。もう少し言うと作品の背景まで気にし始めたら読書が楽しくなくなりそうなので、わざわざ楽しくなくなる部分まで知らなくて良いです。
古典ミステリーは読みづらくて私は嫌いです。なのでそれらを読んで勉強し模倣し、読み易く現代技術に乗せたミステリーとして書いてくれる作家さんは好きですし尊敬します。このあたりは読書に対する価値観の違いなので、良し悪しではない部分でしょう。何かの拍子に「こういったミステリーの源流はどこだろう?」と知りたくなったら古典ミステリーを読み始めれば良い、と私は考えています。
本格ミステリーとは何かについて面白い考えが色々出てくるので、気になる方はチェックしてみてください。
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