東野圭吾 「希望の糸」
新刊が出ているのを見かけて買ってみました。
主人公の刑事は喫茶店を経営している女性が殺害された事件を捜査していた。その最中に死んだとされていていた父親が生きており、危篤状態であると知らされる。一方で娘と二人暮らしをしている男性がいた。かつて二人の子を災害で失い、そこから立ち直るためにと授かった娘だが、そのことが原因で近頃娘との関係が上手くいっていなかった。そんな中で通っていた喫茶店を経営していた女性が殺害されたことをきっかけに警察が訪れてくる、というお話。
加賀シリーズの外伝に当たる作品になります。加賀も出てきますがメインではありません。
この作品のテーマはおそらく「血縁の認知」です。加賀シリーズは家族や絆をテーマにしたものが多いのですが、これもその類です。
いないと思ってた血縁関係者が突然現れたとき、それを受け入れられるか?という心情が上手く描かれています。実は親が別の人で…という認知の流れは見たことありますが、この作品に出てくるパターンは初めて見ました。(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)
久しぶりに東野さんの作品を読むたびに思いますが、読みやすさと話の構成の上手さが段違い。
作中で「覚悟を持って進む」というセリフが多く出てきます。
「男性の方が女性より精神的にタフ」とか「女性は出産を経験しているから図太い」など言われていますが、本書を読んでいると男女で覚悟に対する強さの種類が違うように見えました。
男性は断続的にやってくる判断事に覚悟を持つことに優れています。日々の仕事で判断が迫られる場面に長期的に晒されても耐えられる、という点からマネージャーは男性が向いているなんて主張も出てくるのは分かる気がします。
一方で離婚など人生の岐路になるような覚悟をするときにいつまでも踏ん切りがつかない男性が多いという印象です。こういう場面だと女性の方が判断もその後の行動も整然としていると私は思っています。
こういう違いがあるからこそ、家庭だけでなくどんな環境でもどちらかだけに偏るような状況は好ましくない、というのが私の考えです。
この作品はシリーズからは外れているので読む順番なども気にしなくて良いので、誰に薦めても大丈夫な作品です。
本当に書きたいことがネタバレに触れるのでこれくらいしか書けませんが、とても良い作品です。