花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

山田宗樹 代体

山田宗樹 「代体」

前に同じ作者の「百年法」が私の中で大ヒットだったので買ってみました。



舞台は近未来。人間の体から意識を取り出して人工的に作成した身体に転送する技術「代体」が普及した世界。問題はありつつもビジネスとして成立するほどになっていた。あるとき代体を使用している男性が行方不明となり、ボディは見つかったがそこには男性の意識が入っていなかった。抜け出した男性の意識はどこへ行ったのか、というお話

もし人造人間に意識を移せるようになったらどんな社会ができるか、というSFです。
現代にはない社会を頭でイメージしながら読めるので想像力が掻き立てられます。ただ技術の仕組みの説明が書かれている部分があるので、そこは頑張って理解しないと読むのが難しいです。

もし代体が可能な社会が出来たらどんな良いところと悪いところがあるかという話をすると、
利点は病気やケガで入院しなくてはいけない人が代体することで、社会復帰が早くなるという点。また投薬や手術の苦痛を回避できるということもあり、これはかなり便利そうです。もう一つは理想の容姿が手に入るという点。身体的なコンプレックスの解消もありますが、私が着目すべきと思うのは本来の肉体の性別と違う体に意識を入れられるというところ。

もし実現したら性同一性障害者や同性愛者の問題に対して一石投じることになるのは間違いなさそう。
問題点は代体から代体へ意識を移し続けることで不老不死になれるという点。本書の中では法律で禁じていました。もう一つの問題は肉体の売買が始まるという点。ある人物の意識を取り出して消去し、別の人間に対して意識を消去した空の肉体を売りつけるという闇取引が本書内で問題となっていました。意識だけ変わったのを判別する手段がなさそうなのでこれは恐ろしい。

「百年法」に比べるとインパクトは落ちますが、代わりにストーリーが読みやすくなってます。ページも400Pほどなのでちょっと頑張れば読めます。
SF小説好きな人にはおすすめです。