道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
ミステリー小説を探してたら「読むべきミステリー小説20選」にこれが選ばれているのを見て読んでみることにしました。
本好きのコミュニティで何回か題名を聞いたことがあります。
主人公の少年はS君の家に夏休みの課題を届けに行くと、S君が首を吊って死んでいるのを発見した。
学校に引き返して担任の先生に事態を話すと警察と先生が共にS君の家に向かったがS君の遺体はなかったという。
自分の見間違いだったと思い始めたところに、S君が蜘蛛に転生して現れ「担任の先生に殺された」と告白する。
S君の無念を晴らすために先生を追い詰める証拠を探す、というお話。
ミステリー小説として紹介されていましたが、ファンタジーとサスペンス要素を含む作品です。
そして本作品は3つの要素を持つ、中途半端で面白みの少ない作品となってしまっています。
・ファンタジー要素があるので書かれていることが幻想か現実か判別しづらくて、ミステリーとして推理できない
・ファンタジーな世界観を書いているがサスペンス面でリアルなグロテスク系要素が入ってくるので妄想レベルの域でしか描けてない
・狂気的な心理を書いているが、ミステリー面と絡ませるために後から取ってつけた感じがする
という要素同士が足引っ張りあってる構図になっている。調和させられないなら、要素をどれか一個削っていれば面白くなっていたかもしれません。
この作品が一部で称賛されている理由は「ラストシーンの真相」と「タイトルの意味」について考察が出来ることにあります。
ラストシーンがかなり曖昧な表現で書かれているのでそれがどういう真相になったのかを読者が考察できるように著者は書いたそうです。
深く考察するほどハマれなかったのであまり考えませんでしたが、その考察が真相としては最有力とのこと。
この考察合戦が出来ることが本作の魅力なのですが、身もふたもない言い方するとそれ以外何もないです。
著者の「ラットマン」とか読んだことあったんですが、それに比べるとこの本は推されている割に面白くないです。