花の本棚

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久坂部羊  糾弾~まず石を投げよ~

久坂部羊  「糾弾~まず石を投げよ~」

私が最初に読んだ久坂部さんの作品です。「医療ミス」がテーマになっています。



ある外科医が自ら医療ミスを認め、遺族に謝罪と賠償金支払いを申し出る。その行為は「究極の誠意」として世間を騒がせ、主人公の医療ライターが取材していると外科医の元妻から「医療ミスではなく実は殺人だった」という手紙が送られてくる、というお話。

この本のテーマは「執刀した本人しか分からないミスは医療ミスと言えるのか」という話です。患者から診ても明らかなミスを医者と弁護士が隠ぺいする話はよくありますがこういう話は珍しい。言わなければ分からないものを自分が危険に晒されるのに表に出すのは本当に誠意だけからだろうか?と疑って真実を追求する流れは面白いです。

作中で外科医の狂人じみた面がちらほら出てくるのですが、それらはすべて「誠意」から来ていると説明されています。どれほど誠意がある人だとしても自らの身を傷つけてまで誠意を遂行する人はいないそうです。なので誠意が常軌を逸して強くなると自分の身の危険を案じなくなり破滅的な捨て身の行動が平然とできるようになって、さらに行き過ぎると自分を危機に晒すのが楽しくなるそうです。ここまで来るとドMとかそういう領域はもはや超えています。

私は誠実さは人一倍大事にしている自覚があるので、想いが強くなりすぎるとこうなるのかな・・・と衝撃を受けました。
作中の外科医の医療ミスの告白もこの考えに則った真の誠意からの行動だったというわけです。

私が読んだ医療系の小説では一番のインパクトの作品となりました。