花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

米澤穂信 インシテミル

米澤穂信インシテミル

「心理戦が面白い本」を探してみたら出てきた本。




時給11万2千円という破格の仕事に応募した12人。その仕事とは地下施設に幽閉され、実験の下で7日間過ごすというものであった。その実験とは参加者を殺したり、殺した犯人を当てることで報酬金が変わるというものであった、というお話。

人の心理を重視したかなり斬新なミステリーです。凝ったトリックや仕掛けがあるのではなく、登場人物の心理を軸に謎が出てきます。読みながら登場人物の性格を見抜いて、行動を予測して、裏をつく、まで考えて謎を解いていく必要があります。
これを推理して解ける人は本当にすごい。私は犯人が誰かすら分からなかった。

探偵役が犯人を推理して当てる「解決」の場面があるのですが、実験のルール設定がうまく出来ています。というのも犯人当ては「参加者半数以上の賛同」が成功の条件になっているので、参加者の賛同さえ得られれば的ハズレな推理でも成功するという仕組みになっています。仮に論理的に間違っていても、半数以上の参加者に都合の良い推理なら通るという心理戦が展開されます。
ここは少し好みが分かれそうですが、現実に起こる場面にはこちらが近いと思うので読んでてとても面白かった。論理的な話を理解出来ない人が居合わせる場面ならこうなるだろうというのがよく分かります。

映画もあるようですが評判が悪い。ネタバレありのあらすじ見たら、時間の都合で間引かれた人物が心理戦で重要な人でした。そこを間引いたらただのサスペンスになってしまうのでつまらないのは当然。
この作品が気になった人はぜひ本の方を読んでください。