花の本棚

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中山七里 静おばあちゃんにおまかせ

中山七里 「静おばあちゃんにおまかせ」
前に読んだ「テミスの剣」が良かったので別のを読んでみました。



主人公は刑事。彼は人との接し方が上手いこと以外刑事として優れたところがない。事件を担当しても解決の糸口がつかめないため法律家を目指す学生である彼女に事件のことを話すと、次々と事件を解決してしまう。その推理力と洞察力に感心していたが、それらは退官した裁判官である彼女の祖母静おばあちゃんが事件のことを聞いて導き出したものであった、というお話。

今回は推理物の短編集です。静おばあちゃんは「テミスの剣」の中に出てきた冤罪の裁判を担当した裁判官です。このおばあちゃんのキャラが気に入ってたので今回の本に行きつきました。出版順だと本書が先なので好評だったから掘り下げるために「テミスの剣」出した、ということですかね。

推理物といっても短編なので各章で出てくる謎はそんなに深くないです。彼女の両親をひき逃げしたのは誰なのか?という全体通しての謎もありますが、最後のシーンに繋げるためのものなのでそんなに推理するポイントはないです。ですので推理して楽しむよりはストーリーを楽しんだ方が良いでしょう。

この作品は推理よりも静おばあちゃんの説法の方が面白いです。私は祖父母が身近にいたことがないので、おばあちゃんと暮らす生活は羨ましくもあります。
正義とは何か?権力とは何か?という話を法律をずっと守ってきた立場から話しています。「正義は幼稚な考えだが、人として正しく生きていくために必要なこと」ということを本書の中で語っていたように思えました。ということは正義を大事にしている私はいつまで経っても大人になれないかもしれませんね。

さくっと気楽に読める一冊なのでちょっと読書したい、ってときに良い一冊です。