花の本棚

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秋吉理香子 自殺予定日

秋吉理香子 「自殺予定日」
前に読んで気に入った作家から気になったものを選んでみました。

 

 

主人公は実の父と母を亡くして義母と暮らしている女子高生。父が義母に殺されたことを告発するために自殺の名所に向かっていた。自殺を決行するが失敗に終わり、事の始終を見ていたかつてその場所で自殺した少年の幽霊と出会う。義母の告発を手伝う代わりに自殺をやめるように少年から提案されるが、証拠が見つかる可能性が低いため6日調査して証拠が掴めなかったら自殺するということとなった。自殺決行日までに義母を告発する証拠を見つけることができるのか、というお話。

 

メインの内容はミステリー小説となります。それほど難しいミステリーではないので流し読みでも大丈夫です。
また自殺についても多く語られています。当事者やその周囲がどういった心情となるのかを書いていて、ミステリーよりもむしろこっちがメインなのではないかと私は思ってます。
主人公の両親が風水に詳しかったという設定があり風水に関することも書かれています。「大安は良い日」「仏滅はダメな日」というザックリとしたことなら聞いたことあるのですが、これらの日付ってどういう意味なのかなども書かれていてちょっと為になります。

 

ミステリーの方は特に話すことがないので自殺の方についてちょいと書いてみます。
命を捨てて何かを訴えるというのはかなりのパワーがあります。パワーがあるというのは当事者に伝わりやすい、という意味ではなくて「人の命が失われたのに何も思わないのか」という周囲からの大きな重圧が発生するということです。特に日本人は昔から切腹の文化があるので敏感に反応します。最近ですと電通の女性社員が自殺して亡くなりましたが、社会的に大きな影響を与えています。私の会社でも長時間労働をどうするか、に対して最近動きがあると見受けられます。このように命を使って訴えられると(結果的にそうなっただけかもしれませんが)当事者は動かざる負えないので一見亡くなった人の思いが伝わったかに見えますが、当事者の心境はおそらく「面倒なことしやがって・・・」としか考えていません。こういったことがあるので自殺ではよく「周囲の迷惑も考えろ」と言われます。ですが自殺するときにそんなこと考える必要はないと私は思います。本当に迷惑なら降りかかる当事者が自殺が起きないように全力で対策すればいいわけで、それをしなかった人々からどうこう言われる筋合いはありません。

 

それと本書には自殺しようとする人にどう寄り添うかが書かれていました。大事なのは傍に寄り添って、一緒に解決方法を考えてあげることだそうです。少々違いはありますが、私の対処法とだいたい同じようでした。私流の自殺回避の方法は以下を一緒にやってあげることです。
1.自殺して何を解決したいか聞く
2. 1.で出た目的が自殺以外の方法で実現出来ないか考える
3. 2.を実行
特に大事なのは2.で、「自殺以外の方法」は実現性のあるあらゆる手段を可とします。仮に「先輩からのパワハラから逃れたい」だったら「先輩を殺害する」も手段として採用も可です。大切な命を失うのに比べたら殺人罪くらい大したことありません。一見恐ろしいようにも見えますが「自殺はよくない」と何も進展のない言葉をかけるよりは効果があります。実際にこの方法で自殺を回避した人を知っています。

 

身構えずに軽く読めて、深い話もあって、少し雑学が身につくという多方面に美味しい一冊でした。