花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

雫井脩介 望み

雫井脩介 「望み」

あらすじ読んで面白そうだったので買ったみました。

 

 

息子と娘を持つ家族が暮らしていた。ある週末、息子が夜出かけたまま帰って来ず、連絡にも返事をしなくなってしまった。数日後ニュースで息子の友人が殺害されたと報道される。その事件と同時に息子を含めて3人の少年が行方不明となっていた。しかし事件現場から逃走した少年は二人だったと判明する。息子の無実を願う夫と犯人でも良いので生きていてほしいと願う妻が対立し、家庭が徐々に崩れていく。事件の真相はどちらになるのか、というお話。

 

心理描写重視のミステリーといった内容です。
謎解きがあるわけではないのですが、話を面白くする伏線が随所に張られています。ミステリーじゃないと踏んで気にせず読んでたら最後に物凄い仕掛けが待ってました。そして久々に本を読んでいて泣きそうになった。

 

究極の二択ともいえる状況が作られているわけですが、夫と妻どちら寄りの考えに自分がなるかでこの作品の面白さの方向性が変わります。
私は妻側の意見で読んでいました。犯罪者になったとしても最後まで寄り添うのが家族だと私は思っています。
ですがここまでは「自分が親なら」という立場で考えるとです。もし私が息子側だったら死ぬことになったとしても自分の信じる正しい道を歩きたいです。死んでしまったら全部終わりだよ?という意見はもっともですが、一生後悔しながら生きるよりは自分を誇れる気がします。

 

本書では夫と妻の描写を行ったり来たりします。その心理描写はどちらも生々しいですが、特に夫の心理が深いです。
夫は家族を支える立場なので息子のせいで自分の職を失ったり、世間から隠れるように生きなければならないのはプライドが許さないという考えです。ロジカルに考えるなら家族四人ダメになるより一人切り捨てて三人無事な方が良いというのは現実的な意見です。
しかし妻が息子が犯罪者になって夫が職を失うことを前提にし、夫の仕事をあてにしなくなる行動をし出したときの動揺っぷりがリアルでした。こういうことをされると男性は自分の自慢の仕事キャリアを全否定された気分になるそうです、奥さん方は気を付けましょう。

 

これは子を持つ、か持つ予定の人に読んでもらいたい。特に父親に。子どもと向き合うにあたって大事なことがたくさん書いてあります。