花の本棚

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湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー

湊かなえ 「ポイズンドーター・ホーリーマザー」

本好きのコミュニティで話題になっていた一冊。

今回は昔書いた書評なので英訳は無しです。気が向いたら後で追記します。



こちらは短編集になっています。姉妹、同僚の男女、親子など様々な人間関係の間にある人間の黒い部分をピックアップしています。短編集ですが一話一話がどれも大変ドス黒い。湊かなえに黒い作品の上手さはずば抜けてる。

親子間の話の中で「毒親」をテーマにした話があります。毒親に育てられた娘が大人になってあるとき毒親をテーマにした番組に出演して体験談を語るが、その真相は・・・という話で「親の心、子知らず」を体現したような話になっていました。
とはいえ親も子の心は言うほどわかっていないと私は考えています。どんなに密接な関係でも相手の心をすべてわかるのは不可能です。私は家族とはいい関係作れていますが、考えが理解できるのはせいぜい40%、調子よくても60%くらいです。もし「私は子供のことをすべてわかってる、親だもん」という親御さんがいたらそれは激しい思い込みか変な声が聞こえてる可能性が高いので早めに病院に連れて行った方がいいです。放っておくと子供が不幸になるかもしれません。

あと子供を束縛したり攻撃したりしてる親御さんは、後々子供が大人になってパワーバランスが逆転したときに手痛い反撃をされる覚悟をしておいた方がいいです。家族だから許す、というのは今の時代ではあまり通じなくなっているため攻撃していい口実を減らしておくに越したことはありません。また大人になってないから子供は反撃して来ないと高をくくるのも危険です。暴力のパワーバランスなら包丁一本持つだけで簡単に逆転しますし、amazonを見れば斧や鉈などが数千円で売ってる時代ですから。

本書内で他人との関係について書いていて共感できたものがありました。
「他人への優しさと無関心は表面上同じなので勘違いされやすい」というものです。「優しいから他人の行動をそのまま許す」のと「無関心だから他人の行動を見ても怒らない」のは心理は違いますが、行動だけ見ると区別がつかない。なので「自分に対して優しくしてくれてるかと思って踏み込んだら拒否された」という事態が起きます。身に覚えがある・・・という人はする側もされる側も気を付けましょう。

この本は親御さん、あるいは家族と関係がうまくいってないと感じる人にぜひとも読んでもらいたい。私とはまた違う視点や感じ方をすると思います。
久しぶりに重たい内容の本読みましたが、どう現実を受け止めるべきか考えるいいきっかけになっていいですね。