花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

薬丸岳 友罪

薬丸岳 「友罪

読んだのは随分前ですが、好きな作家さんなので書かせてもらいます。
私が社会問題系の本を読むようになった切っ掛けになった作家です。



ジャーナリストを目指したが挫折し、製作所に住み込みで働くことになった青年が主人公。同時期に入社した同僚はどことなく近づき難いが少しずつ打ち解け合っていく。ある日、元恋人のアナウンサーに「13年前におきた少年犯罪について、話を聞かせてほしい」と連絡を受ける。13年前の残虐な少年犯罪について調べを進めていると、同僚がその犯人ではないか?と疑念を抱きはじめる。というお話。


テーマは「親しくている人の過去の罪を知ったらどう向き合うか」です。タイトル「友罪」のまんまですね。暗い過去を持った人たちがどういう心境で社会で生きているか、というのがよく表されています。
少年犯罪した青年、友人が自殺してしまった青年、息子に縁を切られてしまった母親などさまざま。それぞれが自分のしたことを人に告白するシーンもリアルですが、告白される側の心理描写がすごい。実際のモデルがどこかにいるのかと思うくらい。

罪というとイメージわき難いですが、もし親しい人が冷たい目で見られそうなことを過去にしていたと分かったら、関係保てるかどうかということですかね。
私としては「何でも話してね」と言った相手に対してなら関係保てると思います。「何でも」と言ったからにはこの本のように犯罪級のこと話されても一緒に考える心構えでいます。
とはいえ話を持ちかけてくる側の方が聞く側よりもはるかに勇気が要るはずなので、そこを考えると冷たくあしらうことはしたくない。

面白いと思ったのが、誰かに相談した秘密の話が漏れる仕組みが見えたこと。
自分だけ知ってるという重圧に耐えられなくなってそのことを別の人に相談してしまい、それが連鎖して口の軽い人に伝搬してしまうという仕組み。「口が堅い」は相当な勇気と忍耐のある人の特性と言えます。

薬丸岳の本いくつか読みましたが、全部に共通するのは「自分のしたことから逃げずに向き合ってください」というメッセージを込めているようです。
これだけ重いテーマ終わり方に希望が持てるのが良いところ。
かなり面白いので薬丸岳が気になる人はこれから読み始めるのもアリだと思います。