松城明 「観測者の殺人」
松城さんの作品であらすじが面白そうだと思って読んでみたところ、以前読んだ「可制御の殺人」の続編だと気づいた作品。

ある人気VTuberを演じていた女性が配信中に首を斬られて殺害されるという事件が発生する。犯人はネット上で「観測者」と名乗る人物であり、フォロアー100人以上の人間を毎週一人無差別に殺害すると犯行予告したことで、世間は騒ぎになる。
殺害されたVTuberの友人でありデザインを提供していた女性が傷心していると、一人の男性が声をかけてきて鬼界という人を操るのが異常なまでに上手い人物が裏で事件に関わっていると告げてくる。それを聞いた彼女は自分の手で犯人を探し出すために男性と協力して調査を開始する、というお話。
SNSをテーマにしたミステリー作品となります。前作「可制御の殺人」は短編集でしたが、こちらは長編になっています。
本作の見所は設定がミステリー部分に上手く活かされていて面白い点にあります。共通点が無い被害者たちを「観測者」は本当に無差別に選んでいたのか、などの謎に対する真相や仕掛けは作中の設定が上手く活かされていて面白いです。「人を操るのが上手い」という設定が便利過ぎて強引な部分も少々ありますが、全体的にミステリーとして質が高いので楽しめました。
また本作ではSNS含むネット上で情報を受け取りすぎている問題に対して、どうすれば解決できるかを登場人物たちが語っているシーンがいくつかありました。理解するにはネットリテラシーに関する知見が必要ではありますが、それぞれの考え方が面白いのでこの点も本作の見所となるでしょう。
前作「可制御の殺人」を読んでからの方がいいか、という点については必須ではないけど読んでおいた方が楽しめるでしょう。「鬼界」という人物が何者で、登場キャラとどういう因縁があるのか?の部分は説明されていないので前作を読んでいないと分かりません。この部分はそこまで重要ではないのですが、ちゃんと楽しみたい方は前作から読むと良いでしょう。
社会問題系の作品としてみても面白い作品ですので、気になる方はチェックしてみてください。
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