桜井美奈 「堀の中の美容室」
以前読んだ桜井さんのもので気になる作品を見つけたので読んでみました。
刑務所の中にある受刑者が務める美容室に様々な想いを持った女性たちが髪を切りに来るというお話です。内容は過去の自分と決別したい、昔に戻りたいなど想いはありつつも決心が付かない人々がこの美容室で髪を切ることで前に進み始める、という短編集になっています。登場人物たちが悩んでいる心情がリアルに描かれており、非日常な場所で髪を切ることで想いが固まる場面はとても素敵な描写になっています。最後の章では刑務所の美容師自身の物語もあり、話のまとまりも上手くて読みやすいです。
髪を切ることが題材ということもあり登場するのはほとんど女性です。男性はどうかというと反省や戒めを示すために髪を切る(刈る)という使い方しか思いつかないので本書のような素敵な物語にはならないなと思い至りました。
手軽に読めて雰囲気の綺麗な作品ですので、力を抜いて読みたいときにおススメです。
