花の本棚

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佐藤究 テスカトリポカ

佐藤究 「テスカトリポカ」
個人的に注目していた佐藤究先生の最新刊をやっと買ってきました。見かけてから結構経っているのですが、理由は後程。
 

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メキシコに住む人々は国境を超えた向こうに素晴らしい地があると信じていた。そう思わざるを得ないほど、彼らの生活には犯罪と死が日常的に、ありそれだけでなく宗教的な生贄のために殺害される人も多くいた。人々の間では太平洋の端と呼ばれる国 日本は良い国として噂されていたため目指す人も少なくなかった。
麻薬密売人、闇医者、殺し屋などといった悪人たちが日本とメキシコを舞台に麻薬をめぐって生き残りをかけて戦うというお話。
 
エンターテインメント系の作品です。
悪人たちがどうやって生き残るために戦うか、また悪人たちなりに大事にしている誇りがあるという描写がリアルに描かれていて、ただただ血生臭い戦いを描いているだけでないので面白いです。それ以外にもメキシコの情勢やメキシコと日本のギャング事情も描かれているため普通の人々が日頃見ないような世界観が描かれているのも読んでいて面白い点だと思います。
またおよそ550ページの本の厚さもすごい。最初見つけた時に手に取りましたが思わずいったん戻してしまったくらいでした。それくらいボリュームのある作品です。舞台がメキシコから日本に移ったりするので間延びした感じはなく、最後まで楽しめました。
一点気を付けた方が良いのは、密売人や殺し屋が拷問、殺害するシーンといったグロテスクな描写があることです。おそらくリアルさ重視で著者はそういった描写を書いてくれているのだと思うのですが、苦手な方は気を付けましょう。
 
長編映画一本見たような気分になれる作品なので、腰を据えて読むのがおススメです。