花の本棚

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春口裕子 イジ女

春口裕子 「イジ女」
タイトルが気になって読んでみました。
 

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様々な「イジ~な女」を描いた短編集です。イジ悪な女、イジっぱりな女など多種多様な女性が出てきます。
タイトルが今話題の「いじめ」なのですが、イジめをする女は最後の章にだけ出てきます。
この作品の魅力は心理描写のリアルさにあります。他のもそうでしたが春口さんの作品は女性の心理描写がとても上手い。
短編集なので一つ一つは深い話ではありませんが、リアリティに関してはどれも質が高いです。
女性が読めば一度は見たことのある状況や心理があって共感できるところが多いと思います。男性が読むとこんなことを気に掛けないといけないなんて女性って大変だな、と思うかもしれません。
 
本書に意地を張る女が出てくる章がありました。
私は意地はらない方なのでどういう気持ちか分からなったのですが、読んでみて理解が進んだ気がしました。進んだ上で思うことは、人間は意地を張るのは向いてないということ。
自分の体を一時的に大きく見せて天敵の襲撃から逃れる、というのは他の生き物もやることなので行動自体は自然なことと取れます。しかし人間の場合、一度意地を張って大きく見せたら元の大きさに戻せないのが問題です。大きくなった状態を記憶した人がひとりでもいると自然体の自分でいられなくなると、外でも家でも張り詰めっぱなって心の病気になるのは目に見えています。
結局は自分に合ったグレードで自然体に振舞ってるのが一番良い。
 
女性の心理が上手く描かれているので、そういうの把握してみたいと思う方にはおススメです。