花の本棚

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湊かなえ 母性

湊かなえ 「母性」

湊さんの作品の中でも完全女性寄りな一冊だと思います。



女子高生が自宅の中庭で倒れているのを母親が発見する。4階から転落したことによる事故か自殺として調べが進む中で母親が言葉を詰まらせながらコメントを発表した。母親のコメントを見た主人公はこの事故に疑問を持ち始める
母親の手記と娘の回想から真相が徐々に浮かび上がってくる、というお話。

タイトルの通りテーマは「母性」についてです。なので内容は女性よりのものです。愛情に関しての考え方の行き違いで母と娘の関係が徐々にこじれて行くところとかはとてもリアルで人間味がある。ミステリー要素もあるので最後の方にどんでん返しがありました。途中で何か変だとは思ったけどそういうのがあるとは思ってなかった。なので読み進めてても飽きがなくて良い。

母性というと女性なら誰しも持ってる本能と思われがちですが、動物でも子育て放棄してる場面がよくテレビに出てますので、動物的な本能としてすべての女性が持ってるものではありません。本書内でも母性がなくても子供を産むことは出来てしまう、と書かれていました。

母性があるかないかの見かたとして面白い考え方が出てました。それはその人が娘でありたいか母になりたいかで分かるというものです。
娘でありたいと願う人は愛情をもらいたい、庇護されたいと強く求めているため母性が強くないと見る、という考え方です。
これは当たってそう。つまりはその女性がどれくらい親に依存しているかを見ると程度が分かるという意味になりそうです

完全に女性目線の作品なので男性だと理解しきれないところはあると思いますが、愛情の行き違いの部分などは男性にも関わるところがあったので男性でもおススメできます。
深い人間模様とミステリーを両方味わえる良い作品でした