花の本棚

読んだ本の感想や考えたことを書いています

山田宗樹 百年法

山田宗樹 「百年法」

読んだのはかなり前ですが、今まで読んだSF小説の中でもトップクラスの面白さだったので紹介します。



原子爆弾を6つ落とされた日本は焦土と化し滅亡寸前になった。打開するために国は感染すると不老不死となるウィルスを用いた医療技術をアメリカから取り入れた。
しかしこれだけでは死なない人間が増え続けるため、不老となった人は手術して100年後に安楽死施設で死ななければならないという法律「百年法」も同時に誕生する。
それから月日が経ちいよいよ百年法が初施行されようとしたとき、百年法が国民投票で凍結されてしまう。百年法と国の未来をめぐってさまざまな想いとドラマが展開されていくというお話。

不老の技術が出来たことで起きる問題が、今の日本が抱えてる問題をSF風に体現しているのだろうか?という内容に見えました。
不老になってしまったために幾つになっても衰えないことで仕事から退かなくなり、若い世代が職につけなくなった→定年後再雇用によって生じる雇用問題
大半の人が若いうちに不老となるため老人を支えるという概念がなくなり、家族という形態が無意味なものとなった→無縁社会
等々全部書くときりがないくらい様々な問題について書いてます。
これを回避する手段が百年法だとすると、これらの問題は一定年齢になったら安楽死という制度で解決すると言っている?SFとはいえなんとも恐ろしい発想。

生きる期日が間近に来て死ぬのが怖くてなんとか逃げ延びようとする描写が多いのですが、その姿がとても醜い。不老の手術の段階で分かっているのに。
潔さは美徳の一つとして大事にしたい。
反対に官僚側の主人公が国の未来のために信念を持って立ち向かう姿はとてもかっこいい。

読んでて困るのは作品内の時間軸が数十年単位で流れていくので登場人物がごっちゃになることです。そういう世界観なので仕方ないですが、日にち置くと誰だっけ?ってなります。

重い内容で話も長めなので読むの大変ですが間違いなく面白いです。